ボエン
 古いスカウティング誌には「ボエン問答」というのが連載されていたが、この「ボエン」という言葉は、大阪の言葉で、これがスカウト用語として仲間の間だけで特殊な意味に使われだしたのは大正14年の秋ごろからであり、スカウト出身の小寺進という早稲田大学の学生が使い始めたといわれる。

 大正14年に佐野常羽氏がギルウェルパークから帰られ、日本で初めて指導者実修所が山中湖畔で開設されたとき、小寺氏を含めて8名が大阪から入所した。
 実修所修了後、実修はこれからだということで大阪第1ローバースカウト隊を結成し、その仲間が大阪の阿波座にある小寺氏の家を集会場として毎月集まって盛んにスカウティングについて討議しあい、研修していた。

 ある時、小寺氏が誤った考えを述べたところ、仲間の一人がひらきなおって猛烈につっこんだとき、小寺氏は自分の考えが間違っていたことに気がついて「やられた。ヒョコタン、ボエンとやられた。」と、頭をかいたときの仕草がまことにユーモラスでスカウト的であったので、これが仲間に愛用されるようになった。但し形容詞のような「ヒョコタン」は省略されて「ボエン」だけが残った。

 これが全国に広まって「ボエンを食らわす」とか「ボエンをいただいた。」というように使われ始めた。この意味は、自分が気づかなかった盲点を仲間から忠告してもらう、また忠告してあげるとか、天狗になりかけている鼻を互いに折りあうとか、年長者に対して進言するとか、若い者に向かって、タルンでいるのを苦言するとか、率直に言いにくいことを言い合うという意味である。
 剣道で言う「1本参る」とか「叩き合い」と同じ心境である。

 ボエンを受ける方も素直に受けることが大切で、悪意にとったり感情的になったり弁解するなどは未熟といわねばならない。